従来の人事評価制度は廃止すべき?新しい人事評価制度について詳しく解説
2024/10/17
多くの日本企業では、人事評価制度を通して従業員の能力を評価し、給与や昇進の根拠として採用してきました。
しかしその一方で、この人事評価制度が抱える課題から、近年ではあえて人事評価でのランク付けを廃止した「ノーレイティング」を導入する企業も増えてきています。
本記事では、人事評価制度に関する最新の状況と、注目されている新しい人事評価制度、ノーレイティングについて詳しく解説します。
今後の経営活動の参考にしてください。
人事評価制度を廃止する企業が増えている理由
従来の人事評価制度は、主に「業績評価・能力評価・情意評価」を評価対象としており、報酬・待遇の決定や、有効な人材配置や人材育成に生かすことができます。
しかし、同時にいくつかの課題もあり、従来の制度を見直そうとする動きがみられています。
ここからは、従来の人事評価制度を廃止する企業が増えている理由について解説します。
- 評価基準の複雑化
- 人材流出を防ぐため
廃止の主な理由は上記2つになります。
それぞれみていきましょう。
評価基準の複雑化
近年では、従業員に求められる能力が多種多様化しているため、これまでのようにあらかじめ決められた項目のみでの評価では対応しきれなくなっています。
主な評価方法の一つであった「MBO(目標管理制度)」も、目標達成度を評価するというランク付け自体が目的化してしまうことがあり、評価基準の複雑化のためランク付けを廃止するべきという考えが増えています。
人材流出を防ぐため
従来の人事評価制度によるランク付けでは、従業員同士の優劣が明確になってしまい、企業内にヒエラルキー構造が生まれるというのも課題の一つです。
正しく評価されなかったり、低評価をされた人材はモチベーションが下がり、離職率の増加にも繋がりかねません。従業員が評価ばかりを気にしてしまう環境からの打破として、あえて人事評価を廃止する企業が出てきています。
人事評価制度が抱える課題・主な不満
次に人事制度が抱える課題について、下記3つを解説します。
- 評価を公平・公正に保つのが難しい
- 多様化されている働き方への対応が難しい
- 評価制度自体が不完全
評価を公平・公正に保つのが難しい
従来の古い人事評価制度は、在籍年数や年齢を元に評価していたこともあり、企業によってはどうしてもその影響を受けている場合があります。
その際に特に若手層が評価に「納得いかない」「不公平である」と感じやすいのが現状です。
また、人事評価制度は評価者の主観に基づいた評価となるため、評価者のバイアスや偏見によって不満や不公平感が生まれる可能性があります。
これらの状況を打破するためには、客観的な評価方法や透明性のある評価基準を積極的に導入し、主観的な評価要素を減らしていくのが重要です。
多様化されている働き方への対応が難しい
人事評価制度は、時代によって対応を変えていく必要があります。
近年ではテレワークの導入が進められていますが、実際に働いている環境を確認することができないため、業務への積極性などが評価しづらいという部分があります。
ウェブ会議やチャットでのコミュニケーションを増やす企業もありますが、対面に比べるとどうしても評価の質は下がるでしょう。
評価制度自体が不完全
人事評価制度の評価は、成果主義の思想をベースに、自社の経営ビジョンに基づいて行われます。
しかし、日本企業は導入の際に経営ビジョンとそれに伴い必要となる評価要素について熟考してこなかったため、評価軸が定まらない面があります。
人事評価制度自体が不完全であることから、そもそも評価制度を無くしてしまおうという動きが出てきています。
人事評価を廃止?新しい評価制度「ノーレイティング」とは
現在、アメリカでは人事評価制度を廃止する動きが出てきています。
「人事評価制度を廃止」と聞くと、人材の評価自体をやめることに思えますが、人材や企業の成長を促す上で、人材の評価自体を完全に廃止することは難しいでしょう。
人事評価を廃止する、というのは、「人材のランク付けや点数付けをやめる」ということで、評価をしなくていいというのは誤解です。人事評価の負担は変わらないと考えて良いでしょう。
米国発の新しい評価制度「ノーレイティング」は、点数で評価を行うのではなく、目標に対してのプロセスを評価する方法です。
目標達成までの行動の内容、どのように目標を達成したのか、目標の見直しは行われたのかなどといったことも含め、高頻度でフィードバックを中心にした1on1ミーティングを実施し、面談を通して人事評価を行う方法です。
日常的に上司と1対1で面談を行うことからコミュニケーションが取りやすく、フィードバックの機会を頻繁に設けることで、従業員の効果的な評価や育成に繋げていきます。
現在はGEやマイクロソフト、アドビシステムズ、GAPなど、欧米の数多くの企業が続々と従来の人事評価を廃止し、ノーレイティングに移行しています。
アメリカの企業は成果主義という考え方が強いことから、ノーレイティングの導入や人事評価の廃止が比較的スムーズに受け入れられる傾向にあるのでしょう。
ノーレイティングが広まった理由
人事評価制度において「ノーレイティング」が広まった理由はいくつかありますが、主な理由として挙げられる下記4つをご紹介します。
- 評価のストレスと負担の軽減に繋がる
- フィードバックの質向上が実現可能
- 社員の協力とエンゲージメントの向上
- 変化するビジネス環境への適応
なお、ノーレイティングは、評価プロセスをより建設的で、成長を促進するものを目指すために導入されています。
評価のストレスと負担の軽減
従来の評価制度は、評価者と被評価者の双方に対して大きなストレスや負担を伴うことがありました。
評価の結果に基づいて昇進や報酬が決まるため、評価がプレッシャーとなることがありますが、ノーレイティングのアプローチでは、点数やランキングに依存せず、より建設的で前向きな対話に焦点を当てることで、ストレスを軽減し、社員の成長促進を目指すことができます。
フィードバックの質向上が実現可能
点数や評価の数値だけでは、具体的な行動や成果に対する理解が不十分であることが多いですが、ノーレイティングでは、定量的な評価ではなく、詳細なフィードバックや対話を通じて、社員が具体的にどのように改善できるかを明確にすることができます。
このアプローチにより、社員の自己改善やスキル向上が促進されます。
社員の協力とエンゲージメントの向上
ノーレイティングの制度では、評価よりも協力やチームの成果に焦点を当てることが多いため、これにより個人の競争よりもチーム全体の協力を促進し、社員のエンゲージメントやチームワークを向上させることができます。
変化するビジネス環境への適応
現代のビジネス環境では、スピード感や柔軟性が求められるため、従来の人事評価制度では、長期間にわたる評価プロセスが業務の進捗に対して迅速に対応できないことがあり、今までのランク付けによる評価では査定が困難になりつつあります。
アメリカでは日本よりも終身雇用廃止の流れが進みつつある中で、より多面的に評価する必要が出てきているため、定期的なフィードバックや改善を重視し、業務の変化に迅速に対応することが可能なノーレイティングが重宝されています。
ノーレイティングのメリット
人事評価制度を撤廃し、ノーレイティングを導入することには、いくつかの明確なメリットがあります。
- 公平性の向上
- 評価プロセスの簡素化
- 多様な働き方に柔軟に対応できる
- エンゲージメントとモチベーションの向上
- コミュニケーションの促進
一つずつみていきましょう
公平性の向上
ノーレイティングでは、評価が点数やランクに依存しないため、評価者のバイアスや偏見の影響を軽減できます。
従業員は、具体的なフィードバックを通じて自分の強みや改善点を理解でき、評価の公平性が高まるのが一番に挙げられるメリットです。
評価プロセスの簡素化
点数や評価のための管理作業が減ることで、人事部門やマネージャーの負担が軽減され、より効率的にリソースを活用できます。
評価プロセスが簡素化されることで、日常業務に集中しやすくなるでしょう。
多様な働き方に柔軟に対応できる
従来の人事評価制度のような決まったフォーマットや条件がないため、時短勤務や在宅勤務など、現代の多様な働き方に臨機応変に対応することができます。
定期的なフィードバックや対話を通じて、変化するビジネス環境や業務ニーズに迅速に適応することができ、評価制度の見直しや更新が不要なため、柔軟に対応することが可能になるでしょう。
エンゲージメントとモチベーションの向上
ノーレイティングを導入することにより評価が建設的で前向きなものになれば、従業員のエンゲージメントやモチベーションが高まることが期待されます。
フィードバックが成長のための支援となり、仕事に対する意欲が向上するでしょう。
コミュニケーションの促進
フィードバックを通じて定期的にコミュニケーションを図ることで、上司と部下の関係が改善され、よりオープンな対話が促進されます。
これにより、問題解決や目標設定がスムーズになるでしょう。
ノーレイティングのデメリット
人事評価制度を撤廃し、ノーレイティングを導入する際には、下記のようなデメリットや課題も存在します。
- 昇進や報酬の決定が難しい
- 成果の評価の難しさ
- 管理者のトレーニングとサポートの必要性
- 文化や慣習との摩擦
企業がノーレイティングを導入する際には、これらのデメリットを考慮し、適切な準備とサポートを行うことが重要です。
昇進や報酬の決定が難しい
ノーレイティングには点数やランクがないため、従業員の昇進や報酬の決定に対して、どのように判断を下すかが難しくなることがあります。
具体的な評価基準がないと、昇進や報酬に対する透明性が欠け、社員の不満を招く可能性があります。
成果の評価の難しさ
従来の人事評価制度では定量的な成果が明確に示されますが、ノーレイティングでは成果を具体的に数値化しないため、個々の貢献度や業績の評価が難しくなる場合があります。
これが昇進や報酬の決定に影響を及ぼすことがあります。
管理者のトレーニングとサポートの必要性
ノーレイティングの導入には、管理者やリーダーが効果的なフィードバックを提供するためのトレーニングやサポートが必要です。
このトレーニングが不十分だと、フィードバックの質が低くなり、ノーレイティングの効果が十分に発揮されない可能性があるでしょう。
文化や慣習との摩擦
企業の文化や慣習が強く評価制度に依存している場合、ノーレイティングの導入が既存の制度と衝突することがあります。
従業員やマネージャーが新しい制度に対して抵抗を示すことがあり、変革の過程で混乱が生じることがあるでしょう。
適切な準備で公平・公正・多面的な人事評価を
本記事では、今後の人事評価制度の仕組みの変化について解説してきました。
ノーレイティングに移行する企業も増えてきていますが、日本の文化や慣習とは相性が良いとは一概には言い切れません。
とはいえ企業の成長を促すためには、従業員を評価するということには変わりはありません。正しい方法で実現し、評価制度自体を大きく改革するのがおすすめです。
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この記事を書いたライター
Newton編集部
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