人事考課とは?人事評価との違いやメリット・デメリット、評価基準も解説
2024/07/29
人事考課は、多様性のある社会において企業には不可欠な制度です。
従業員の給与や賞与の査定を始め、従業員のスキルアップやモチベーション向上に直結するため、公平性や客観性を取り入れることが求められます。
そんな人事考課ですが、よく並列して語られるのが「人事評価」です。
本記事では、人事考課について掘り下げるとともに、人事評価との違いについても解説します。
また、それぞれの目的やメリット・デメリット、評価基準についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
人事考課について
人事考課とは、従業員の業務への貢献度や能力を評価し、昇進や昇給の人事査定、給与や賞与等の報酬決定に直結する社員評価の仕組みです。
従業員一人ひとりに求める結果は異なるため、評価基準はそれぞれ別のものになります。
この評価基準は公正なものである必要があります。
基本的には金銭的な部分に関することを決定するのが、人事考課の範疇とされています。
人事考課の目的
人事考課の目的は、人材を適切に評価し、昇進や昇給、給与や賞与などの賃金管理の処遇全般を決定することです。
従業員の業務成果や能力、業績などをふまえた上で異動配置、能力開発などの根拠にします。
査定基準を可視化し、業務内容の差や人間関係による不公平感を排除することで、公平・公正・平等に実施されるのが理想的です。
人事評価について
人事評価は人事制度の構成要素の一つで、評価結果を従業員の育成や成長に繋げようとする考え方が特徴です。
従業員の業務結果や能力を正当に評価し、モチベーション向上や人材育成へと繋げることに重点が置かれ、直接的な賃金や地位の報酬よりも、やりがいを引き出すために賞賛や承認をおこなうために人事評価とされています。
人事評価の目的
人事評価の目的は、従業員が会社の基本指針・理念に沿った行動や成果を上げているかを把握し、適切な評価をすることです。
主に従業員の評価決定・育成を目的とする部分があるため、人事評価は給与と結びつけずにうまく運用することで社員の育成につながっていくでしょう。
「人事評価の目的」についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照ください。
人事考課と人事評価の違い
人事考課と人事評価についての違いですが、実は根本的な違いはないとされています。
古くから「人事考課」という言い回しが多くの企業で使われていたものの、最近では「評価」という誰にでも分かりやすい言葉を用いるようになってきたといわれています。
一般社会では人事考課と人事評価を区別せずに用いる企業も多いことから、ほぼ同じ意味と捉えても問題はありませんが、厳密な線引きとしては、下記のように区別されることがあります。
- 人事考課:従業員の給与などの待遇決定を目的に能力などを査定する
- 人事評価:従業員の業務や能力を評価し、人事異動や育成を目的とする
人事考課と人事評価は、社員を評価するという点では共通していますが、「人事考課」は給与や賞与など、金銭的な部分に関することが決定されるという認識で、狭義の評価を指します。
対して「人事評価」は、従業員の人材育成や能力開発を含め、人事異動などに関わる部分の評価で、より広義でとらえた評価と認識されています。
人事評価の方が人事考課よりも、より大きな評価対象の分類となります。
人事考課の3つの評価基準と評価方法
人事考課の評価基準は、企業によって異なります。
- 業績(成績)考課
- 能力考課
- 情意考課
今回は、業界問わず広く使用されている3つの項目をご紹介します。
業績(成績)考課
業績考課は、一定期間における、企業目標やノルマに対する達成度の評価です。
目標に対する達成度をMBOやOKR(目標管理制度)を活用して行われます。
目標への達成率が足りなければマイナス評価になり、大きく達成しているならプラス評価になるため、シンプルで納得性の高い評価方法ですが、その客観性や公平性を保つためには、数値化された明確な判断基準を設ける必要があります。
そのため業務考課では、中間目標としてKPIと最終目標としてKGIを、あらかじめ明確に設計しておきましょう。
能力考課
能力考課は文字通り従業員のスキル、知識などの能力に加え、コミュニケーションスキルやリーダーシップ、企画力、計画力、実行力など、直接的な業務スキル以外も評価します。
各個人の能力が実際にどれくらい発揮されたか、それを開発しようと努力しているかも評価対象になります。
各能力をどの程度評価に落とし込むかは、業界や会社、業務内容、あるいは職位によっても異なってくるのが一般的です。
情意考課
情意考課は、従業員の仕事に対する意欲や姿勢、態度を評価する方法で、業務に対する積極性や責任感などの姿勢、日々の行動などの勤務態度が反映されます。
規律性、責任感、協調性、積極性などを評価するため、定量化することが難しく、評価者(上司)の主観が反映されやすいことから公正な判断が難しい場合もあります。
一定の評価項目を設定し客観的に評価することができれば、周囲との協調性や企業のビジョンへの共感にも繋がる重要な観点となります。
人事考課に役立つ評価方法
人事考課で評価を行う際に、役立つ評価方法について確認してみましょう。
- コンピテンシー評価
- 360度評価(多面評価)
- MBO
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、業務においての成績や業績が高い、ロールモデルになり得る従業員に共通する「コンピテンシー(行動特性)」に着目して、それを基準とした「コンピテンシーモデル(評価基準)」を設定し、ここの従業員の評価基準を策定する評価方法です。
優秀な人物に行動内容や能力が近づくほど、高い評価になります。
会社側としては、従業員に求める優秀な人材を評価項目として明確に示すことで、自社の方向性や理念を従業員と共有することができ、従業員側としては努力や自己研鑽の方向性も明確化することでモチベーション向上にも繋がります。
360度評価(多面評価)
360度評価は、評価対象者の上司やリーダーのみではなく、同僚や部下、他部署や社外取引先など、複数名が評価する手法です。
さまざまな立場から評価することによっていち個人のバイアスが取り除かれ、評価対象者を客観的に評価することが可能になります。
360度評価によって評価対象者が職務遂行能力を備えているかどうかを判断し、公平性を保った公正な人事評価を行うことが可能になり、それにより評価に対する社員の納得感も高まる方法です。
MBO
MBOとはManagement By Objectivesの略称で、直訳すると「目標(Object)による管理(Management)」です。
元々は経営学者のP.F.ドラッカーが1950年代に提唱したマネジメントの概念で、「従業員が自分で目標を決める」というのが特徴です。
組織目標に対する貢献方法として従業員自身の目標を紐づけて設定します。
目標達成までの従業員の自主性を育み活性化し、モチベーションを向上させる仕組みとされています。
人事考課を行うメリット
人事考課を行う際のメリットはたくさん存在しますが、大前提として、人事考課の評価基準が可視化され、かつ従業員に正しく伝達できていることが重要になります。
ここからは、人事考課によって得られるメリットを具体的にまとめていきます。
- 企業、従業員間の信頼が深まる
- 企業ミッションへの理解を促すことができる
- 従業員のモチベーション向上
くわしく説明していきます。
企業、従業員間の信頼が深まる
人事考課を導入することで、企業側は査定基準を従業員に伝え、従業員側は仕事に対する希望やキャリアパス、疑問点等について、企業とコミュニケーションを活性化させることができる良い機会となります。
双方の理解が深まることで、企業は個々のキャリア形成に最適な人材マネジメントを実現することが可能になり、従業員は業務遂行においての不満解消にも役立ち、離職率の低下にも繋がります。
企業ミッションへの理解を促すことができる
人事考課の際、企業は従業員に企業ミッションを提示することになります。
企業が描く方向性を共有し、従業員に期待する行動水準への理解を促すことで、従業員自身も仕事や、自身の必要性を認識することができるでしょう。
評価の優先度を見える化することで企業の将来像を伝えることができ、従業員も日々の業務を通し目標達成に向けて、主体性を持って行動できるようになるでしょう。
従業員のモチベーション向上
人事考課を通して企業は従業員に評価のポイントを伝えるため、従業員自身はどのようなスキルを身に付ければ評価されるのかを理解できるメリットがあります。
一人ひとりの自己研鑽・努力の方向性が明確になるため、従業員のモチベーションも高まります。
適切な評価・フィードバックで納得性のある人事考課を行うことができれば士気も高まり、企業全体の生産性向上も期待できるでしょう。
人事考課を行うデメリット
人事考課にはメリットが多い一方で、デメリットも存在します。
主なデメリットには下記があります。
- 評価者の高いスキルが求められる
- 自社にとって都合のいい人材育成をしてしまいかねない
把握した上で、人事考課を行うようにしましょう。
評価者の高いスキルが求められる
従業員全体を適切に評価するということはとても難易度の高い業務のため、評価者側にも非常に高いスキルが求められます。
従業員との対話を重ねることは、大変な時間と労力を要します。
その中でできる限り公正中立で平等な人事考課を行う必要があるため、とても困難であるといえるでしょう。
いくら評価者自身が公平性を保って評価しているつもりでも、評価対象者が不公平さを感じている場合には意味がありません。
また評価基準が曖昧になってしまい納得感のある人事考課が行われないと、従業員のモチベーションが低下する恐れもあります。
モチベーションの低下や離職を予防するためにも、公正でバイアスの生じない評価制度や、適切なフィードバックを通し、一定の納得性を持てるような人事考課を行う必要があります。
自社にとって都合のいい人材育成をしてしまいかねない
人事考課制度は、あくまでも「自社にとって望ましい人物像」に焦点を当てて評価します。そのため、画一的な人材開発に繋がってしまう可能性も孕んでおり、型にはまった人材育成となってしまうかもしれません。
このような事態を避けるため、人材要件に変化が生じた際に対応できるよう、評価基準について型にはめすぎないよう注意する必要があります。
人材管理システム導入で人事考課もスムーズに
今回は人事考課や人事評価の違い、それぞれの目的などについてご紹介しました。
人事考課や人事評価を通し従業員を適切に評価する制度は、従業員の業務に対するモチベーションを高めるだけでなく、人材育成にも繋がる重要な仕組みです。
そのため、適切な評価について理解を深め、公平且つ多角的に評価を進めることが大切です。
しかし、人材を適切に評価するということは決して簡単なことではなく、まして完璧な人事考課を行うことは極めて困難です。適切な評価を行うためには、評価する側にも非常に高いスキルが求められます。評価者・評価対象者双方が納得できることが重要です。
人事考課・人事評価への課題が増えてきたら、業務の流れを再検討し見直してみてもよいかもしれません。評価ミスを防ぐためにも、人材管理システム・タレントマネジメントシステムの活用がおすすめです。
人事評価ツールNewton(ニュートン)は、社員教育や給与水準に対しての課題や、スキル・マネジメント・スタンスなど個人の評価が細かく判断でき、課題や教育指針の共有が可能です。個人評価と上長評価の差異が一目で分かるため、教育の質・スピードが効率化されます。また独自のシステムにより、顧客満足度の向上・生産性の向上を兼ね備えた詳細な仕様が特徴です。
単独の評価者では評価にムラができやすいですが、複数人による多画的な評価をデータで自動取得できることにより納得度も高まるでしょう。(※特許取得済)
いつでもどこでも入力が可能なので手軽に導入しやすい点も喜ばれています。
組織・企業の成長に繋がる人材育成を実現したいとお考えの方は、ぜひニュートンをご活用ください。
この記事を書いたライター
Newton編集部
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