客単価の分析方法を徹底解説!飲食店経営の羅針盤
2025/10/27
「日々の売上が思うように伸びない…」
「長年の勘と経験だけに頼る経営に、そろそろ限界を感じている…」
飲食店の経営者や店長の皆様なら、一度はこのような悩みに直面したことがあるのではないでしょうか。お客様を増やす努力も大切ですが、実はもう一つ、売上を大きく左右する重要な鍵があります。
それが「客単価」の分析と向上です。
この記事は、データ分析の専門家ではない、現場で奮闘するあなたのための経営の羅針盤です。高価な分析ツールは必要ありません。身近なExcelを使い、自店の「客単価」を正しく分析し、売上アップに繋げるための具体的な方法を、手順を追って分かりやすく解説します。
そもそも客単価とは?売上を伸ばすための最重要指標

客単価とは、お客様一人あたりが一度の来店で支払う平均金額のことです。
計算式は非常にシンプルで、以下の通りです。
| 計算項目 | 計算式 |
|---|---|
| 客単価 | 売上高 ÷ 来客数 |
この客単価は、さらに細かく分解して考えることが重要です。
売上の構造を理解することで、どこに改善の余地があるのかが見えてきます。
| 売上を構成する要素 | 分解式 |
|---|---|
| 売上高 | 客数 × 客単価 |
| 客単価 | 平均注文点数 × 平均商品単価 |
新しいお客様を呼び込む(客数を増やす)には、広告宣伝費などのコストや多大な労力がかかります。一方で、今いるお客様にもう一品注文してもらったり(注文点数アップ)、より価値の高い商品を選んでもらったり(商品単価アップ)する方が、効率的に売上を伸ばせる可能性があるのです。だからこそ、客単価の分析は、売上向上のための最重要指標と言えます。
自店の立ち位置は?業態別・客単価の平均データ
まずは、自店の客単価が業界水準と比べてどの位置にあるのかを客観的に把握しましょう。業態によって平均客単価は大きく異なります。
| 業態 | 平均客単価(目安) |
|---|---|
| ファストフード | 964円 |
| 居酒屋 | 3,942円 |
| 専門料理店 | 4,500円~12,000円 |
出典:外食市場調査などに基づく参考値
自店の客単価を計算し、上の表と比較してみてください。もし平均より低い場合は、価格設定やメニュー構成に改善のチャンスが眠っているかもしれません。逆に高い場合は、その価値を維持・向上させることが今後の課題となります。
客単価分析の第一歩!まずは必要なデータを集めよう

「データ分析」と聞くと、難しく感じるかもしれません。しかし、心配は無用です。高価なPOSシステムがなくても、日々の売上伝票やレシートがあれば、分析は始められます。
まずは、身近なExcelを使って、会計ごとの注文データを記録することから始めましょう。最低限、以下の項目を記録できれば、基本的な分析は可能です。
| データ項目 | 記録内容の例 |
|---|---|
| 日付 | 2025/10/26 |
| 時間帯 | 12:15 |
| 会計ID | 001 |
| 注文商品 | Aランチ |
| 単価 | 980円 |
| 数量 | 1 |
| 金額 | 980円 |
| 注文商品 | セットドリンク |
| 単価 | 200円 |
| 数量 | 1 |
| 金額 | 200円 |
最初は大変かもしれませんが、まずは1週間分だけでもデータを集めてみてください。この地道な記録が、あなたの店の経営課題を明らかにする「宝の地図」になります。
【Excelで実践】飲食店の客単価を伸ばす具体的な分析方法4選

データが集まったら、いよいよ分析のステップに進みます。ここでは、専門家でなくてもExcelで簡単に実践できる、効果的な4つの分析手法をご紹介します。
これらの手法を使えば、あなたの店の「強み」と「弱み」が数字となって見えてくるはずです。
- 分析①:ABC分析
- 何がわかる?:「売れ筋」と「死に筋」の商品が明確になる
- 分析②:バスケット分析
- 何がわかる?:一緒に注文されやすい「黄金の組み合わせ」がわかる
- 分析③:メニューエンジニアリング
- 何がわかる?:本当に「儲かっているメニュー」がわかる
- 分析④:RFM分析
- 何がわかる?:お店を支えてくれる「優良顧客」がわかる
分析①:ABC分析で「売れ筋・死に筋」商品を特定する
ABC分析は、商品を売上高の高い順に並べ、A・B・Cの3つのランクに分類して管理する手法です。「売上の8割は、全商品のうちの2割が生み出している」というパレートの法則に基づいています。この分析により、どの商品に力を入れるべきか、逆に見直すべきかが一目瞭然になります。
| ランク | 売上構成比(目安) | 特徴と対策 |
|---|---|---|
| Aランク | ~80% | 売れ筋商品(重要管理品目)。看板メニューとして品質を維持し、積極的に販促を行う。品切れは絶対に避ける。 |
| Bランク | 80%~95% | 準売れ筋商品。Aランクに育つ可能性を秘めている。露出を増やす、セットメニューに加えるなどの工夫を検討する。 |
| Cランク | 95%~100% | 死に筋商品。改善策を考えるか、思い切ってメニューから外すことを検討する。食材ロスの原因にもなりやすい。 |
Excelを使えば、商品を売上順に並び替え、累計構成比を計算するだけで簡単に分析できます。まずは、自店のAランク商品が何かを把握することから始めましょう。
分析②:バスケット分析で「セット注文」の黄金パターンを見つける
バスケット分析とは、一回の会計(バスケット)で、何と何が一緒に購入されているかを分析する手法です。例えば、「ハンバーガーを頼むお客様は、8割の確率でポテトも注文する」といった傾向を見つけ出します。
この分析結果は、効果的なセットメニューの開発や、スタッフによる追加提案(クロスセル)の強力な根拠となります。「アヒージョには、ぜひバケットもご一緒にいかがですか?」この一言が、データに基づいた提案であれば、お客様の満足度も客単価も同時に向上させることができます。
POSデータがなくても、日々の伝票を注意深く見返すことで、人気の組み合わせのヒントは得られます。
分析③:メニューエンジニアリングで「儲かるメニュー」を育てる
メニューエンジニアリングは、「人気(販売数)」と「利益率」という2つの軸で各メニューを評価し、メニュー構成全体を最適化する科学的なアプローチです。メニューを以下の4つのカテゴリーに分類し、それぞれに適した戦略を立てます。
| カテゴリー | 人気度 | 利益率 | 戦略 |
|---|---|---|---|
| スター | 高 | 高 | 看板メニュー。メニューブックの目立つ位置に配置し、積極的にプロモーションする。 |
| プラウホース | 高 | 低 | 人気はあるが儲けが少ない。値上げやポーションの見直しで利益率改善を検討する。 |
| パズル | 低 | 高 | 儲かるが注文が少ない。スタッフのおすすめやメニューブックの工夫で人気度向上を図る。 |
| ドッグ | 低 | 低 | 人気も利益もない。抜本的な改良を施すか、メニューからの廃止を検討する。 |
この分析を行うことで、どのメニューを育て、どのメニューを見直すべきかが明確になります。
分析④:RFM分析で「優良顧客」を見極め、再来店を促す
RFM分析は、会員カードや予約システムの顧客データを活用し、お客様をグループ分けする手法です。
以下の3つの指標で評価します。
- Recency(最終来店日):最近いつ来てくれたか
- Frequency(来店頻度):どれくらいの頻度で来てくれるか
- Monetary(購入金額):どれくらいお金を使ってくれるか
この分析により、「最近も来てくれて、頻度も高く、たくさんお金を使ってくれる」といった優良顧客を特定できます。そして、顧客グループごとに最適なアプローチが可能になります。例えば、優良顧客には感謝を込めた特別優待を、しばらくご来店の無いお客様には再来店を促すクーポンを送る、といった施策が考えられます。
分析結果を売上UPに!客単価を上げる実践アクションプラン7選

データ分析で自店の課題が見えてきたら、次はいよいよ具体的な行動に移す番です。
分析結果を基に、明日からでも試せる客単価向上のための実践的なアクションプランを7つご紹介します。
1. メニューの「価値」を伝え、納得感のある価格改定を行う
単に値段を上げるだけでは、お客様は離れてしまいます。大切なのは、価格以上の「価値」を感じてもらうことです。例えば、ABC分析で特定したAランク商品について、「〇〇県産の希少な豚肉を使用」「シェフが毎朝市場で仕入れる新鮮野菜」など、食材へのこだわりや調理法の工夫をメニューブックや接客で丁寧に伝えましょう。価値が伝われば、お客様は価格改定にも納得してくれます。
2. アップセルで「もうワンランク上」の満足度を提供する
アップセルとは、お客様が選んだ商品よりも、もうワンランク上の高価格な商品を提案する手法です。「+300円で、パスタを当店自慢の生パスタに変更できますが、いかがなさいますか?」「+500円で、お肉を特選和牛にご変更できますよ」このような提案は、お客様の選択肢を広げ、より高い満足度を提供しながら、自然に客単価を向上させることができます。
3. クロスセルで「ついで買い」を自然に促す
クロスセルは、お客様が注文した商品に関連する別の商品を提案する手法です。バスケット分析で見つけた「黄金の組み合わせ」が、ここで活きてきます。「本日ご注文の白身魚のカルパッチョには、こちらの辛口の白ワインが非常によく合いますよ」お客様の食事体験をより豊かにする提案を心がけることが、成功の秘訣です。
4. セットメニューやコースで「お得感」と「注文点数」を両立させる
単品で注文するよりもお得に感じられるセットメニューやコース料理は、お客様に選ばれやすく、注文点数を増やす上で非常に効果的です。ランチセットやディナーコース、ファミリーセット、飲み放題プランなど、ターゲット顧客のニーズに合わせて多様な選択肢を用意しましょう。バスケット分析で人気の組み合わせをセットにするのも良い方法です。
5. 松竹梅(3段階価格設定)でお客様の選択を誘導する
同じカテゴリーの商品を「松・竹・梅」の3つの価格帯で提供すると、多くの人は真ん中の「竹」を選ぶ傾向があります。これは「極端回避性」という顧客心理を利用したもので、最も利益率の高い商品を「竹」に設定することで、収益の最大化を図る戦略です。例えば、ステーキのメニューで「並・上・特上」と設定し、お客様の選択を自然に誘導します。
6. メニューブックのデザインを改善し「儲かるメニュー」に視線を集める
メニューブックは、単なる品書きではなく、強力な「無言のセールスマン」です。お客様の食欲を刺激する魅力的な写真や、ストーリーを感じさせるキャッチコピーは注文率を大きく左右します。また、メニューエンジニアリングで特定した「スター(高人気・高利益)」商品を、人の視線が集まりやすいとされるメニューブックの左上や最初のページに配置するなど、戦略的なデザインを心がけましょう。
7. 高原価率の「目玉商品」で全体の注文を誘発する
あえて原価率の高いメニューを「本日のおすすめ」や「数量限定」として提供し、お客様に「お得感」や「特別感」を感じてもらう戦略です。この魅力的な目玉商品が、お客様を惹きつけるフック(きっかけ)となります。そして、その目玉商品と一緒に、他の利益率の高いドリンクやサイドメニューを注文してもらうことで、結果的に全体の客単価と利益を向上させることが狙いです。
客単価アップで失敗しないための2つの注意点

客単価を上げるための施策は、やり方を間違えると逆効果になる可能性もあります。長期的に愛されるお店であり続けるために、以下の2つの注意点を必ず心に留めておいてください。
1. 顧客満足度を最優先に考える
客単価を上げたいというお店側の都合ばかりを優先してはいけません。無理な値上げや、お客様の意に沿わない強引なセールスは、顧客満足度を著しく低下させ、大切なお客様を失う原因となります。全ての施策は、「お客様にもっと喜んでもらうためには?」という視点から出発することが重要です。顧客満足度の向上の結果として、客単価が上がる。この順番を決して間違えないようにしましょう。
2. 損益分岐点を把握し、利益構造を理解する
売上だけを見て一喜一憂する「どんぶり勘定」から脱却しましょう。お店を経営するには、家賃や人件費などの「固定費」と、食材費などの「変動費」がかかります。売上が、これら全てのコストをちょうど賄えるようになる地点が「損益分岐点」です。自店の損益分岐点を把握することで、最低限必要な売上目標が明確になり、客単価をいくら上げれば、どれくらいの利益に繋がるのかを数字で考えられるようになります。
【次のステップへ】Excel管理から脱却!日次PLツールで経営を加速させる

ここまで、Excelを使った客単価分析の方法をご紹介してきました。しかし、日々のデータ入力や集計作業に追われ、本来注力すべき接客やメニュー開発の時間が奪われてしまう、という新たな課題に直面するかもしれません。Excelでの分析に慣れ、データに基づいた経営の面白さを実感したなら、次のステップとして、より効率的で高度な経営管理を可能にする専門ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
なぜ日次PLツールが必要なのか?Excel管理の限界と課題
Excelは手軽で便利なツールですが、飲食店経営の管理においてはいくつかの限界点があります。
- 手間と時間: 毎日、手作業で売上や経費を入力し、集計・分析するのは非常に時間がかかります。
- リアルタイム性の欠如: 締め作業が終わらないと、その日の損益が把握できません。
- 属人化: 特定のスタッフしか扱えない複雑なファイルになってしまいがちです。
- 情報の分断: POSデータ、勤怠データ、発注データなどがバラバラに管理され、全体像が見えにくくなります。
これらの課題は、経営判断の遅れや機会損失に直結する可能性があります。
導入事例:日次PLツール「ダ・ヴィンチ」で実現するデータドリブン経営
日次PLツール「ダ・ヴィンチ」は、こうしたExcel管理の限界を克服し、飲食店経営のDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進するツールです。POSレジの売上データを自動で取り込み、日々の損益(PL)をリアルタイムで可視化します。スタッフは「本日の気づき」などを入力するだけで日報作成が完了し、現場の負担を大幅に軽減します。
ある焼肉店の事例では、「ダ・ヴィンチ」の導入によって、これまで月間合計で24時間かかっていた締め作業が、わずか6時間に短縮されました。さらに、経営状況が全スタッフに共有されることで改善提案が活発化し、結果として客単価が10%も向上したという実績もあります。
開発元の実体験から生まれた、現場に寄り添う信頼性
「ダ・ヴィンチ」が他のツールと一線を画すのは、開発元である株式会社デイドリーム自身が、10年以上にわたり9店舗の飲食店を経営してきた経験から生まれたツールであるという点です。かつて経営破綻の危機を乗り越えた実体験から得たノウハウが、製品の隅々にまで活かされています。現場の痛みや本当に必要な機能を熟知しているからこそ、経営者と現場スタッフの双方に寄り添う、信頼性の高いシステムが実現したのです。
まとめ:データ分析で「勘と経験」を「確信」に変えよう

飲食店の客単価分析は、もはや一部の専門家だけのものではありません。日々の売上データの中にこそ、あなたのお店の未来を切り拓くヒントが隠されています。この記事で紹介した分析方法やアクションプランは、どれもExcelひとつで今日から始められるものばかりです。
「勘と経験」という熟練の武器に、「データ」という新たな羅針盤を加えてみませんか。これまでぼんやりと見えていた課題が、具体的な数字として明確になり、打つべき施策が「確信」に変わるはずです。
まずは、今日の営業が終わったら、売上伝票を一枚一枚見返してみてください。一番多く注文されたメニューは何でしたか?一緒に注文されたドリンクは何でしたか?その小さな気づきが、データドリブンな経営者への、記念すべき第一歩です。
Excel管理の次は、日次PLツール「ダ・ヴィンチ」で“見える経営”へ
Excelでの分析に慣れてきたら、次のステップは経営データを自動で見える化する仕組みづくりです。飲食店の現場で生まれた経営管理ツール「da Vinci(ダ・ヴィンチ)」なら、毎日の売上や原価をリアルタイムに把握できます。
ダ・ヴィンチの主な特徴
-
日次PLを自動作成:POSレジと連携し、売上・人件費・原価を自動集計
-
属人化を防止:データをクラウド共有し、誰でも経営状況を確認可能
-
現場に優しい操作性:スタッフが「今日の気づき」を入力するだけで日報完成
-
経営スピードを加速:翌日の打ち手を即判断できるリアルタイム経営
現場の声から生まれたツールだからこそ、導入もシンプルで続けやすい。数字が“毎日見える”ことで、勘と経験に「確信」が生まれます。
導入や機能に関するお問い合わせはこちらから。
この記事を書いたライター
Newton編集部
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