飲食店の採用コストを削減させる10の秘訣|明日からできる削減術
2025/08/06
飲食店の経営において、人手不足と並んで深刻なのが「採用コスト」の高騰です。
「求人広告を出しても応募が来ない…」
「採用できても、すぐに辞めてしまう…」
このような状況が続けば、費用ばかりがかさみ、店舗経営そのものを圧迫しかねません。
しかし、諦めるのはまだ早いです。採用コストは、正しい知識と戦略があれば、必ず削減できます。
この記事では、採用した人材が定着し、戦力を実現するための10の具体策を紹介します。明日から実践できる内容ばかりです。
無駄なコストを抑えながら、従業員が輝く魅力的な店舗づくりの第一歩を踏み出しましょう。
まずは自店の現状把握から。飲食店の採用コスト、相場と計算方法を知ろう
具体的なコスト削減策に取り組む前に、まずは自店の現在地を正しく知ることが不可欠です。
「うちの店の採用コストは、そもそも高いのか安いのか?」
この問いに答えられなければ、適切な目標設定も対策もできません。
この章では、採用コストを正しく理解するための基本的な知識を解説します。
「採用コスト」と「採用単価」の違いは?今すぐできるコスト計算方法
「採用コスト」とは、採用活動全体にかかった費用の総額を指します。
これには、大きく分けて「外部コスト」と「内部コスト」の2種類があります。
コストの種類 | 具体的な内容例 |
---|---|
外部コスト | – 求人広告の掲載費用 – 人材紹介会社への成功報酬 – 採用イベントの出展費用 – 採用パンフレットなどの制作費用 |
内部コスト | – 採用担当者の人件費(面接や選考にかかる時間) – リファラル採用の紹介者へのインセンティブ – 応募者への交通費支給 |
一方、「採用単価」とは、従業員を1人採用するためにかかった費用のことです。
以下の計算式で簡単に算出できます。
採用単価 = 採用コスト総額 ÷ 採用人数
まずはこの計算式を使い、自店の採用単価を正確に把握することから始めましょう。
これがコスト削減の第一歩となります。
正社員・アルバイトの平均採用単価は?飲食業界の相場
自店の採用単価を計算したら、次はその数値が適正なのかを判断するために業界の相場と比較してみましょう。
採用市場の動向や調査データによると、飲食業界における1人あたりの平均採用単価は以下のようになっています。
雇用形態 | 平均採用単価(目安) |
---|---|
正社員 | 50万円~100万円以上 |
アルバイト・パート | 5万円~10万円 |
もちろん、これはあくまで目安の金額です。
都市部か地方か、店舗の規模、募集する職種によっても単価は変動します。
しかし、もし自店の採用単価がこの相場を大幅に上回っている場合は、採用活動のどこかに改善すべき点がある可能性が高いといえるでしょう。
なぜウチは高い?飲食店の採用コストが高騰する3つの根本原因
自店の採用コストが高い場合、その背景にはいくつかの原因が考えられます。
これらは、自社の努力だけではコントロールが難しい「外部要因」と、改善可能な「内部要因」に分けられます。
外部要因
- 深刻な人手不足と競争激化: 少子高齢化による労働人口の減少に加え、飲食業界は他業種と比べても特に人材不足が深刻です。求職者優位の「売り手市場」が続いているため、人材の奪い合いが激しくなり、結果として採用コストが上昇しています。
内部要因
- 採用ミスマッチによる早期離職: お店の雰囲気や仕事内容が合わないといった理由で、採用したスタッフがすぐに辞めてしまうと、再び採用活動が必要になり、コストが無駄にかかります。
- 非効率な採用プロセス: 書類選考や面接に時間がかかりすぎると、優秀な応募者は他の店に決めてしまいます。応募から採用までのスピード感の欠如が、機会損失とコスト増を招いています。
これらの原因を理解し、自店がどこに課題を抱えているのかを特定することが、効果的な対策を打つための鍵となります。
【即効性あり】求人広告費(外部コスト)を賢く削減する5つの方法
採用コストの中でも、特に大きな割合を占めるのが求人広告費などの「外部コスト」です。
しかし、この外部コストは工夫次第で大きく削減することが可能です。
この章では、明日からでもすぐに取り組める、実践的なコスト削減策を5つご紹介します。
やみくもに費用を削るのではなく、賢く使って費用対効果を最大化させましょう。
1. 無料の求人媒体・サービスを徹底活用する(Indeedなど)
有料広告を出す前に、まずは無料で利用できるサービスを最大限に活用しましょう。
代表的なのが、求人検索エンジンの「Indeed」です。
Indeedは無料で求人情報を掲載でき、多くの求職者の目に触れる可能性があります。
大切なのは、無料だからと手を抜かないことです。
- 魅力的な求人原稿: 仕事内容だけでなく、お店のこだわり、スタッフの雰囲気、身につくスキルなどを具体的に書きましょう。
- ターゲットが検索するキーワード: 「賄いあり」「駅チカ」「未経験歓迎」など、求職者が検索しそうなキーワードを盛り込むことが重要です。
- こまめな情報更新: 定期的に求人情報を更新することで、上位に表示されやすくなります。
この他にも、地域の情報交換サイトやSNSのコミュニティなど、無料で活用できる場はたくさんあります。
2. ハローワークや調理師専門学校へのアプローチを見直す
昔ながらの方法と侮ってはいけません。
ハローワークや専門学校は、今でも有効な採用チャネルです。
特に、調理師やサービス業を志す意欲の高い若手人材と出会える専門学校との関係構築は、長期的に見て大きな資産となります。
- ハローワーク: 求人票の書き方を工夫するだけで、応募効果は変わります。窓口の担当者に相談し、自店の魅力を最大限にアピールできる書き方を研究しましょう。
- 専門学校: 定期的に訪問して担当者と良好な関係を築き、求人票を直接届けたり、可能であれば学内での説明会を実施したりするのも効果的です。熱意が伝われば、優先的に学生を紹介してもらえる可能性があります。
3. 成功報酬型求人サイトを賢く利用する
「成功報酬型」の求人サイトは、採用が決定するまで費用が発生しないため、広告費を掛け捨てにするリスクがありません。
初期費用を抑えたい、または採用人数がそれほど多くない店舗にとっては、非常に合理的な選択肢です。
ただし、採用決定時の報酬額が比較的高めに設定されている場合があるため、注意が必要です。
募集する職種の専門性や、採用の緊急度などを考慮し、掲載課金型の求人サイトと費用対効果を比較検討することが大切です。
自店の状況に合わせて、最適な求人サイトを選びましょう。
4. 有料求人広告の費用対効果を最大化する
有料の求人広告を利用する場合でも、工夫次第で費用対効果は大きく変わります。
以下のポイントを見直し、広告費を無駄にしない運用を心がけましょう。
- ターゲットを絞る: 「誰に」来てほしいのかを明確にし、そのターゲットに響くメッセージを発信します。「元気な学生さん」なのか「経験豊富な主婦(主夫)の方」なのかで、訴求すべき魅力は異なります。
- 写真で魅せる: 文字情報だけでは伝わらないお店の雰囲気や、スタッフの楽しそうな表情を写真で伝えましょう。シズル感のある料理の写真も、応募意欲を刺激します。
- 適切なプランを選ぶ: 広告代理店の言うがままに高額なプランを選ぶのではなく、自店の予算や採用目標に合ったプランを慎重に選びましょう。まずは小規模なプランから試してみるのも一つの手です。
5. 採用代行(RPO)でノンコア業務を外注し、コストを最適化する
「面接の日程調整や応募者対応に追われて、本来の業務が手につかない…」
そんな経営者・店長の方には、採用代行(Recruitment Process Outsourcing, RPO)の活用も有効な選択肢です。
RPOは、採用戦略の立案から応募者管理、面接設定といった採用プロセスの一部または全部を外部の専門企業に委託するサービスです。
専門家のノウハウを活用することで、採用活動の効率化と質の向上が期待できます。
費用はかかりますが、採用担当者の人件費や時間的コストを考慮すると、結果的にコスト削減につながるケースも少なくありません。
RPO導入により、採用コストを30〜45%削減できる可能性があるという調査結果もあります。
【中長期で効く】費用対効果を最大化する新しい採用戦略3選
目先の広告費を削減するだけでなく、将来的にも安定して人材を確保できる「強い採用力」を身につけることが、本質的なコスト削減につながります。
そのためには、求人媒体に頼るだけの「待ち」の姿勢から、自ら魅力や情報を発信していく「攻め」の姿勢へと転換することが重要です。
ここでは、自社のファンを作り、採用ブランディングにもつながる新しい採用戦略を3つご紹介します。
1. リファラル採用|低コストで質の高い人材を確保する最強の手法
リファラル採用とは、自店の従業員に知人や友人を紹介してもらう採用手法です。
この手法の最大のメリットは、以下の2点です。
- 低コスト: 求人広告費が一切かからず、紹介してくれた従業員へのインセンティブ(謝礼)だけで済みます。
- 高い定着率: 従業員がお店の雰囲気や仕事内容を理解した上で紹介するため、入社後のミスマッチが起こりにくく、定着率が高くなる傾向があります。
実際に、株式会社串カツ田中ホールディングスでは、リファラル採用の強化により採用コストを30%削減し、離職率を15%低下させることに成功しています。
成功の鍵は、明確な制度設計です。
紹介インセンティブの内容や支払い条件を決め、全従業員に周知徹底することが重要です。
2. SNS採用(Instagram/X)|お店のファンを採用につなげる
今や、お店を探すだけでなく、働く場所を探すためにもSNSが活用される時代です。
特に、写真や動画との相性が良いInstagramは、飲食店の魅力を伝えるのに最適なツールといえます。
発信する内容:
- こだわりのメニューや美しい盛り付け
- スタッフが楽しそうに働く様子や賄いの風景
- 店長の想いやお店のコンセプト
ハッシュタグ戦略:
- 「#(地域名)グルメ」「#(地域名)アルバイト」といった地域に関連するタグ
- 「#カフェ巡り」「#ラーメン部」といった興味関心に関連するタグ
日頃からお店の魅力を発信し続けることで、「このお店で働いてみたい」と感じるファンを育てることができます。
あるカフェチェーンでは、Instagramを活用した採用活動により、応募数が3倍に増加し、採用単価を20%削減したという事例もあります。
3. 自社採用サイト|応募の受け皿を作り、採用の資産にする
求人媒体への掲載は一時的なものですが、自社のウェブサイト内に設けた採用ページは、永続的に情報を発信し続けることができる「採用の資産」となります。
求人媒体で興味を持った応募者が、より詳しい情報を求めて公式サイトを訪れることは少なくありません。
採用サイトには、求人媒体の文字数制限では伝えきれない、以下のような深い情報を掲載しましょう。
- 経営者の想いやビジョン
- 活躍する先輩スタッフのインタビュー記事や動画
- 具体的なキャリアパスや研修制度
- 福利厚生などの働く上でのメリット
魅力的な採用サイトを育てていくことで、求人媒体への依存度を下げ、長期的な採用コストの削減につながります。
採用の無駄をなくす!定着率を上げてコストを根本から削減する秘訣
どれだけ採用コストを抑えても、採用した人材がすぐに辞めてしまっては、すべてが水の泡です。
採用活動は、人材を採用して終わりではありません。
従業員が長く定着して活躍してくれることこそが、最も効果的なコスト削減策といえるでしょう。
そのためには、「採用ミスマッチの防止」と「従業員エンゲージメント(働きがい)の向上」が不可欠です。
採用ミスマッチを防ぎ、早期離職をなくす面接術
早期離職の多くは、入社前のイメージと入社後の現実とのギャップ、つまり「採用ミスマッチ」が原因で起こります。
これを防ぐためには、面接の段階で相互の理解を深めることが極めて重要です。
- 応募者の価値観を知る質問: 「仕事において何を大切にしていますか?」など、スキルだけでなく価値観を探る質問をしましょう。
- 現実的な情報開示(RJP): お店の良いところだけでなく、仕事の大変な部分や厳しい側面も正直に伝えましょう。例えば、「週末は非常に忙しいですが、チームで乗り越えた時の達成感は格別です」といった具体的な伝え方が有効です。
良い面ばかりを見せて採用しても、長続きはしません。
【独自情報】人事評価システム「ニュートン」で教育と評価を仕組み化し、定着率を高める
従業員が「この店で働き続けたい」と思うためには、「公正に評価されている」という納得感と、「成長できている」という実感が必要です。
しかし、多くの飲食店では評価基準が曖昧だったり、店長の感覚に頼ってしまったりしているのが現状です。
この課題を解決するのが、人事評価システム「ニュートン」です。
「ニュートン」は、飲食店の現場に特化した評価・教育の仕組みを提供し、従業員の定着率向上をサポートします。
ニュートンの主要機能 | この機能で実現できること |
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評価設計機能 | 役職ごとに明確な評価基準を設定。従業員は何を頑張れば評価されるのかが明確になり、モチベーションが向上します。 |
教育カリキュラム | 評価項目をそのまま教育カリキュラムとして活用。OJT(現場研修)の質が標準化され、新人でも早期に戦力化できます。 |
評価のデータ化 | 自己評価と上長評価をシステム上で簡単に行い、データとして蓄積。評価プロセスにかかる時間を大幅に削減します。(ある導入企業では作業時間が50%削減) |
給与設計機能 | 評価結果と給与を連動させる仕組みを簡単に構築。頑張りが給与に反映されるため、従業員の納得感が高まります。 |
このように、教育と評価、そして給与を仕組みで連動させることで、従業員のエンゲージメントを高め、離職を防ぎます。
これが、採用を繰り返す無駄なコストを根本から断ち切るための、最も戦略的なアプローチです。
まとめ|採用コスト削減を成功させ、従業員が輝く魅力的な店舗へ
飲食店の採用コスト削減は、単なる経費削減の問題ではありません。
それは、いかにして自店の魅力を伝え、長く働いてくれる仲間を見つけ、共に成長していくかという、店舗経営の根幹に関わる戦略的な活動です。
今回ご紹介した10の秘訣を、最後にチェックリストとしてまとめます。
内容 | チェック |
【現状把握】 | 自店の採用単価を計算し、相場と比較したか? |
【外部コスト削減】 | 無料の求人媒体やハローワークを徹底活用しているか?
成功報酬型サイトやRPOの利用を検討したか? 有料広告の費用対効果を見直したか? |
【新しい採用戦略】 | リファラル採用制度を導入・強化したか?
SNSや自社サイトで情報発信を始めたか? |
【定着率向上】 | ミスマッチを防ぐ面接を実践しているか?
教育・評価の仕組みは整っているか? |
すべてを一度に始める必要はありません。
まずは自店にとって最も効果的だと思われるもの、明日からすぐに取り組めそうなものから試してみてください。
採用コストを最適化することで生まれた余裕を、従業員の給与や福利厚生、教育に再投資する。
そうした好循環を生み出すことができれば、あなたの店舗は人材が集まり、輝き続ける、本当に魅力的な場所になるはずです。
飲食店の定着率を高める「Newton」で評価と教育を仕組み化しよう
従業員の評価や育成に課題を感じている飲食店経営者の方へ。「Newton(ニュートン)」は、飲食業界に特化した人事評価システムです。評価・教育・給与設計を一元管理し、スタッフのやる気と定着率を大きく向上させます。
主な特徴
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明確な評価基準で「頑張り」が見える
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評価と給与を自動で連動
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教育カリキュラムを標準化し、即戦力化を支援
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データ蓄積で継続的な改善が可能に
人材が定着する仕組みを整えれば、採用に頼らない強い店舗が実現します。
「Newton」は、採用コスト削減のその先にある“人が辞めない店づくり”をサポートします。
まずは無料相談で、自店の課題を可視化してみませんか?
この記事を書いたライター

Newton編集部
飲食店の人事に役立つ情報を発信していきます。人材から人材へ、人が育つ人事評価システムNewtonとは、飲食店に特化したタレントマネジメント+人事評価システムです。
管理者の人事管理のパフォーマンスを上げるだけでなく、スタッフのモチベーションアップや、離職率の低下、企業にとっての人材を守るシステムです。詳しくはこちら