人事評価制度のメリットとデメリットとは?各手法の特徴もあわせて解説
2024/06/10
人事評価制度とは、企業の従業員の能力や業績を評価する制度で、社員のパフォーマンスや働きぶりを査定し、それを報酬や等級に反映させるシステムです。
以前は能力よりも勤続年数や年齢で役職を決定する年功序列制が主流でしたが、近年では個人の能力や実績を理解し、評価する人事評価・人事考課が注目されています。
適切な人事評価制度の運用ができれば、従業員のモチベーションを高められるだけでなく、生産性の向上、人材育成などにも役立ちます。
本記事では、人事評価制度において存在するメリットとデメリットをまとめました。また各手法の特徴や対策もご紹介していくので、人事評価制度を有効活用したいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
人事評価制度とは?その目的
人事評価および人事考課とは、従業員の能力やパフォーマンス、業務への貢献度などを可視化して評価し、従業員個々の給与・賞与・昇進などに反映させる制度です。
正しく運用することでさまざまな組織課題の改善に役立つ制度ですが、その一方で不適切・不公平な運用を進めてしまうと、組織運営や業績に悪影響をもたらします。
人事評価を行う際には、自社がどのような目的で人事評価を行うのかをしっかりと理解しておくことが大切です。
人事評価制度の主な目的としては、企業のビジョンや方針、指標、従業員に期待する行動や能力の明確化が挙げられます。
評価制度を活用することで評価基準が明確になり、従業員の成果やプロセス、能力に応じて評価できるので、適切な待遇を決めやすくなります。
公平な評価によって適切に昇給や昇格がされれば、従業員のモチベーションの向上にも繋がるでしょう。その際の従業員の給与や等級の査定には、個人の主観を挟まない公平な評価が欠かせないため、この点は注意が必要です。
人事評価制度により個々の技術や経験もデータベース化できるため、適切な人材配置を行うことができ、マネジメントの効率化も期待できます。
人事評価制度の3つの構成要素
人事評価は、大きく分けて3つの評価制度で構成されています。それぞれの人事評価を解説します。
- 等級制度
- 評価制度
- 報酬制度
この3つの要素は、相互に関係しながら人事評価制度を構成しています。一つずつみていきましょう。
等級制度
等級制度とは、社員に求める能力(どのようなスキルを持っているか)、職務(どのような仕事をして欲しいか)、役割(どのような役割を組織内で発揮して欲しいか)などを分類し、企業ごとに分類、階層化したものです。
等級定義を明示することで、従業員も次の目標が明確になり、企業内での成長のステップを認識してもらうことができます。
評価制度
評価制度とは、上述の等級制度によって決定された評価を元にして、企業の行動指針をふまえ、部長や課長などが各従業員の行動や成果を評価するものです。
個人の業績や成果の他、行動指針の体験度合いや成長度合いといった定性的な目標も設けて評価していきます。「等級制度」によって決定された等級ごとに評価項目が変化するのが特徴です。
報酬制度
報酬制度とは、上述の評価制度に基づいて、報酬や役職、給与や賞与などの待遇面に反映させるものです。
日常の勤怠状況や業務意欲・態度・貢献度、責任感や協調性を評価し、決められた等級ごとに、報酬の上限や下限を変化させます。
給与、インセンティブといった金銭的な報酬以外にも、仕事や役割など非金銭的な報酬に反映される場合もあります。
人事評価制度のメリット
人事評価制度の運用は、会社にさまざまなメリットを与えます。
- 企業理念・ビジョンの浸透
- 生産性・業績の向上
- 給与や等級など処遇基準の確定
- 人材育成の促進・人材のスキル管理
- コミュニケーションの促進
人事評価制度におけるメリットを確認していきましょう。
企業理念・ビジョンの浸透
人事評価制度を導入する際、企業理念やビジョンを評価面談の場で共有することになります。
企業理念やビジョンとは、企業の価値観や方向性、目指すべき将来像などを示したもので、社員が理解を深めることで、企業の理想とする目指すべき従業員象を目指すモチベーションにも繋がります。
また、企業理念・目標設定への理解をしてもらうことで、会社と従業員の方向性のズレを軌道修正する効果もあるでしょう。
生産性・業績の向上
従業員の成果に見合った正当な人事評価制度を導入すると、従業員自身の努力が待遇に反映されるため、給与・待遇を上げるための労働意欲が向上し、職場の生産性や業績の向上へと繋がるでしょう。
さらに、人事評価制度において各従業員が来期に向けてどう取り組むべきかの個人目標を設定し、その個人目標の達成度合いによって評価をするため、目標達成までのプロセスや進捗度合い、目標達成に向けた行動などが分かりやすくなり、マネジメントもしやすくなります。
給与や等級など処遇基準の確定
人事評価制度導入時には、具体的な人物像を設定して評価をします。そのため、評価基準を明確にできるという点もメリットです。
人事評価制度では公平な評価を行うことが重要です。客観的視点で個人の主観を挟まずに給与や等級の査定を行うため、社員の処遇を決める根拠として有用でしょう。
人材育成・スキル管理
人事評価制度では、人材データを元に評価を行います。従業員の成果や業績以外にも、それぞれのスキルや課題を把握することができるため、適材適所への配置が叶い、従業員のスキルアップ・成長の手助けのサポートができます。
それぞれの問題点を指摘したり、従業員ごとに目標・研修を提示したりすることで能力開発に繋がり、人材開発・人材育成に取り組むことができます。
コミュニケーションの促進
人事評価制度では評価面談や1on1などを行うこととなるため、上司と部下の業務においての信頼関係を築くことができます。普段話さないような内容の会話ができる機会となるため、相談や提案がしやすくなったりと、コミュニケーションの促進が期待できます。
評価に関するフィードバックを通して、従業員のモチベーションアップにも繋がるでしょう。
人事評価制度のデメリット
人事評価制度の運用は、さまざまなメリットがある反面、注意すべきデメリットも存在します。
- モチベーションの低下や不満を引き起こす可能性がある
- 評価される仕事しかしない、型にはまった人材が育ちやすい
- 手間がかかる
それぞれ確認していきましょう。
モチベーションの低下や不満を引き起こす可能性がある
人事評価制度では、基本的に序列ができてしまうのは仕方のない点ですが、正しく評価できなかった場合、従業員は企業に不満を抱き、モチベーションの低下により退職に至ってしまうケースもあります。優秀な人材ほど見切りをつける判断が早いとされているため、せっかくの人材が他社へ流出してしまうこともあるでしょう。
特に、自己評価よりも会社からの評価が低かった場合に大きな不満要素となります。従業員からの不満に関する問題を解決するために、評価への適切なフィードバックとフォローが不可欠です。
評価される仕事しかしない、型にはまった人材が育ちやすい
人事評価制度で評価されると、給与や処遇に反映されます。そのため、従業員が評価の向上だけに囚われて、高評価の得られる業務しかしなくなり、評価対象外の業務がおろそかになるリスクがあります。
不適切な評価は従業員への不当な扱いにつながり、組織内周囲での業務のバランスを乱し、全体の効率性に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
また、人事評価の基準を細かく指定しすぎると、求める能力や目指すべき人物像の幅が狭まってしまい、個性のない組織に育ってしまう危険性もあります。
このような事態を避けるために、従業員それぞれの個性や資質に合わせた評価をする必要があります。抽象的な項目や基準も採用すると、多様な人材の育成が見込まれるでしょう。
手間がかかる
人事評価の運用には、手間がかかるものです。
評価者となる担当者は、正当かつ公平な評価を行う必要があります。しかし、主観が入らない評価を行うのは難しく、評価者間で評価のつけ方にばらつきが出るケースもあります。そのため人事評価者のスキルアップのための適切な評価者教育が必要です。
管理が難しいと感じる場合は、人事評価システムを導入するのもおすすめです。
人事評価制度の種類とそれぞれのメリットデメリット
人事評価にはさまざまな手法があります。
- 360度評価(多画評価)
- コンピテンシー評価
- ノーレイティング
- 目標管理制度(MBO)
今回は3つの評価制度について、メリットとデメリットをご紹介します。
360度評価(多画評価)
360度評価・多画評価とは、上司・部下・同僚など、社員に関係するさまざまな立場から多画的に評価を行う手法です。異なる立場の複数人からの評価や意見を反映させることにより、客観性や公平性を保った公正な人事評価を行うことが可能になり、それにより評価に対する社員の納得感も高まります。
メリット
- 客観性や公平性を保った評価ができる
- 社員が評価に納得しやすくなる
デメリット
- 評価対象からの高評価を求めたり、関係性によっては甘く評価してしまう可能性がある
コンピテンシー評価
コンピテンシーは、「業務を遂行する能力や行動特性」を指します。
コンピテンシー評価とは、社内で高い業績を上げる人材の行動特性(コンピテンシーモデル)を評価基準に落とし込み、従業員の評価基準を作成する人事評価制度の手法です。
コンピテンシー評価により、企業が求める人物像や明確な組織目標が明示されるため、従業員の意識を高めることが期待されるでしょう。
メリット
- 具体的な評価基準を定めることができる
- 実際の行動に対しての評価のため、評価対象の納得度が高まる
- 評価者ごとのブレが少なくなる
デメリット
- コンピテンシーの分析や導入に手間と時間がかかる
- 特定したコンピテンシーが正しいとは限らない
ノーレイティング
ノーレイティングとは、ランクづけをしない人事評価制度の手法です。
ランク付けをされないことで、従業員のモチベーション低下を防止し、個性や多様性を認めた評価ができると期待されているため、社員の成長を促し即座にモチベーションをアップさせることができます。
メリット
- 上司と部下のコミュニケーションが多く、認識の乖離が減る
- 面接の度にフィードバックがもらえるため評価の納得度が高まる
- 社員の個性や資質が尊重され、モチベーション向上に繋がる
デメリット
- 管理職の負担が増える
- 部下と1on1面談を行うための管理職のスキルが重要になる
目標管理制度(MBO)
目標管理制度(MBO)とはManagement by Objectivesの略で、直訳すると「目標管理制度」となります。
1954年にP.F.ドラッカーが著書「現代の経営」で提唱した組織マネジメントの理論で、経営目標や部門目標を踏まえて個人目標を設定し、目標の達成度を評価する手法です。目標とその結果が明確なので評価が容易にでき、多くの企業で人事考課に組み込まれています。
メリット
- 「少し」頑張れば達成できそうな目標を設定することでエンゲージメントが高まり、能力開発・人材開発に繋がる
- MBOにより設定した目標は企業側の役に立つ目標だと認めているため、モチベーション向上に繋がる
デメリット
- 昇給に反映させるため目標設定を低くしてしまう
- 評価に影響する業務のみに取り組む傾向がある
人事評価制度導入の注意点
人事評価制度には、「明確な評価基準」「公正な評価」「適切なフィードバック」が必要です。
評価者が制度への理解をしっかりと深めた上で、明確で透明性の高い評価基準を設定し、公平な立場で従業員を評価できるよう研修を実施すること、また評価に対しての適切なフィードバックを意識しましょう。
特に評価が低かった従業員ほど企業に不満を感じる可能性が高いため、納得感を持てるようなフィードバックや制度作りが重要です。
人事評価制度を有効活用しよう
人事評価制度を有効活用することで企業理念の共有や社員のスキル把握、コミュニケーションの促進など、さまざまなメリットがあります。
上手く使えば組織力を大幅に向上させることが可能ですが、一方でデメリットも存在するため、導入の際には注意が必要です。
導入の負担は、人事評価をシステム化することで、評価の質や納得度を上げることができるでしょう。従業員の信頼が格段にアップすれば、生産性や品質の向上に期待できます。
これからタレントマネジメントの仕組み化・見直しをお考えの方には、人事評価に特化した特許取得済のツール、「Newton(ニュートン)」がおすすめです。
各従業員のスキルや個人評価をはじめとした多くの情報を瞬時に確認できる独自のシステムで、個人に適した項目や基準設定により絶対評価が可能になり、組織・企業の成長に繋がる人材育成の実現が目指せるでしょう。
この記事を書いたライター
Newton編集部
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