人事評価の項目とは?評価基準の具体例や人事評価制度運用のポイントを解説!
2024/06/03
人事評価制度は、従業員の役職や職位、報酬などの処遇を決定する際の指標となるもので、従業員のモチベーションを左右する重要な制度です。
そのため、自社にあった適切な制度を構築し、運用していく必要があります。
適切な人事評価制度を構築するためには、評価項目の設定がポイントとなります。
インターネットを検索すればさまざまな評価シートのサンプルが手に入りますが、業種や職種、役職、職位にあった評価項目でなければ意味を成しません。
また、自社の経営理念や行動指針を評価制度に反映させていくことも大切なポイントです。
当記事では、人事評価の項目や具体的な評価基準、人事評価制度運用のポイントを解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
人事評価制度とは
人事評価制度とは、従業員の能力や業績、意欲、勤怠などを客観的な指標によって評価し、役職や職位、報酬などの処遇の決定に反映させるための制度です。
人事評価制度は、以下の3つの要素で成り立っています。
- 評価制度
- 等級制度
- 報酬制度
3つの要素は互いに影響し合い、1つの制度に変更が生じると、他の2つの制度にも影響を及ぼします。
それぞれの詳細を解説します。
評価制度
評価制度とは、組織目標に対する従業員の貢献度合いを客観的な基準によって評価するための制度です。
評価の項目や方法、評価基準は企業によって異なるため、どのような行動や姿勢が高い評価につながるのか、従業員にしっかり周知することが大切です。
等級制度
等級制度とは、職務や成果、スキルなどに応じた等級を設定し、従業員の序列を決めるための制度です。
等級は、従業員がキャリアパスを描くうえで重要な指針となります。
また、等級は報酬に直結するため、従業員の関心が高い要素でもあります。
報酬制度
報酬制度とは、等級や評価を報酬に反映する際に用いる制度のことです。
評価制度や等級制度が整っていても、それが報酬制度に反映されなければ従業員のモチベーションは上がらないでしょう。
評価制度および等級制度とのバランスがポイントとなります。
相対評価と絶対評価の違い
人事評価制度を考えるうえで理解しておくべき事項として、相対評価と絶対評価の違いがあります。
「相対評価と絶対評価はどちらがよいか」といった議論になることがありますが、それぞれメリット・デメリットが存在します。
なお、日本においては相対評価が主流でしたが、近年では労働環境の変化に伴い、個人の成長に目を向ける傾向が高まり、絶対評価を取り入れる企業が増えています。
相対評価
相対評価とは、所属する組織内の他者との比較によって評価する方法です。
たとえば、A~Eの5段階で評価をつける場合、AとEは10%、BとDは20%、Cは40%とあらかじめ枠を決めておき、従業員を枠にあてはめていきます。
従業員同士を比較し、決められた枠に振り分けていく手法のため細かな評価基準を定める必要がなく、評価者の個人的な主観も入りにくい点がメリットです。
一方で、職務に精通している従業員が高い評価を得やすく、新入社員のような経験の浅い従業員は高い評価を得にくいため、個人の成長につながりにくい点がデメリットといえるでしょう。
絶対評価
絶対評価とは、あらかじめ定めた評価基準に照らし合わせて従業員を評価する手法です。
たとえば、評価基準に対して120%以上の達成度ならA、100%ならBといった具合に評価ランクを設定します。
もし、すべての従業員が120%の達成度であった場合、全員がA評価となります。
絶対評価のメリットは、従業員個々の達成度に応じて評価が決まるため、評価に対する納得感が得やすい点です。
また、自分自身に不足している点や課題も発見しやすいため、個人の成長へつながっていきます。
一方で、相対評価と比較すると評価基準を定めることが難しい点がデメリットです。
簡単に達成できる評価基準を設定してしまうと全員が最高評価となってしまったり、難しすぎる場合は誰も最高評価を得られず従業員のモチベーションが下がってしまうリスクがあります。
また、絶対評価はプロセスではなく結果で判断するため、外的要因によって目標達成できなかった場合でも低い評価にせざるを得ないといった側面もあります。
3つの評価項目とは
人事評価の項目は、以下の3つに分けられます。
- 業績評価
- 能力評価
- 情意評価
それぞれの詳細を解説します。
業績評価
業績評価は、「期初に定めた目標を期間内にどのくらい達成できたか」が評価基準となります。
「業務目標の達成度」と、業務目標を達成するために必要な課題の達成度を示す「課題目標達成度」の2つに基づいて評価します。
評価の際は定量的な成果だけでなく、定性的なプロセスも含めて評価対象とするケースが多くあります。
能力評価
能力評価は、「業務の遂行にあたって必要な能力がどのくらい備わっているか」が主な評価基準となります。
具体的には、企画力や実行力、改善力などがあげられます。
他にも、リーダーシップやリスクマネジメント力など、役職や職位、部署によって必要な能力が異なります。
顧客対応部門の場合は、クレーム対応も評価項目に含める場合があります。
業績評価が数値などの客観的な基準に基づくのに対し、能力評価は日ごろの行動や発言などを評価するため、評価者の主観に影響される点が特徴です。
情意評価
情意評価とは、「勤務態度や業務への意欲の高さ」が主な評価基準となります。
情意評価は業績評価や能力評価とは異なり、従業員の人間性を評価できる項目として価値がありますが、評価自体が難しいことや能力評価と同様に評価者の主観に左右されるため、これまであまり重視されてきませんでした。
しかし、情意評価は「成果絶対主義からの脱却」という重要な役割を担っています。
情意評価は短期的には大きな効果は見込めないかもしれませんが、長期的な目線で企業の人材育成を考えるうえで、大切なポイントとなります。
情意評価は以下の4つの項目に分けられます。
- 規律性
- 責任感
- 積極性
- 協調性
それぞれの詳細を解説します。
規律性
規律性とは、「遅刻や欠勤をせず、決められたルールに沿う行動ができているか」、「勤務態度に問題はないか」など、組織の基本的なルールを守れるかを問う項目です。
規律性を評価対象とすることにより、組織全体の規範意識の向上が期待できます。
一方で、規律性は評価者の主観が入りやすい項目であるため、評価基準に公平性を持たせることが大切です。
責任感
責任感とは、自分に与えられた業務を最後まで責任を持って遂行する姿勢を問う項目です。責任感は、将来のリーダー候補を育成するうえでも指標となる大切な項目です。
責任感の評価基準を明確化することで、人材育成や人員配置に役立てられます。
積極性
積極性とは、仕事に対する能動的な姿勢を評価する項目です。
積極性に優れた人材は個人として高いパフォーマンスを発揮するだけでなく、組織全体にもプラスの影響を与えます。
積極性の項目は、「経験のない事例に対しても物怖じせず取り組めるか」、「自分の長所を生かし、業務に反映させる工夫をしているか」などさまざまな指標が考えられるため、評価基準を明確にする必要があります。
協調性
協調性とは、「周囲と協力関係を築きながら1つの物事に取り組めるか」、「組織目標やビジョンに沿う行動ができるか」などを評価する項目です。
必要に応じて他のメンバーに力を貸したり、他部門の従業員とも良好な関係を築けるかといった点も協調性に含まれます。
評価項目の具体例
職種や役職、職位によって求められる能力が異なるため、業績評価および能力評価の評価項目はそれぞれに合ったものを設定する必要があります。
例として、営業職・事務職・管理職の評価項目を紹介します。
営業職
営業職は数値目標を重視するため、業績評価がしやすい職種です。
売上数や売上金額、顧客獲得数などを業績評価の評価基準にするとよいでしょう。
能力評価においては、商談時の企画力や実行力、交渉力などが重視されます。
他にも、コミュニケーション能力やスケジュール管理能力なども大切な要素です。
評価基準 | 評価項目 | 内容 |
---|---|---|
業績評価 | 業務目標達成度 | 目標の達成度 |
課題目標達成度 | 業務目標達成のために必要な課題の達成度 | |
能力評価 | 企画力 | 顧客に対して価値ある提案ができたか |
実行力 | 目標達成に向けた行動量は適切であったか | |
交渉力 | 顧客とのスムーズな合意形成に至ることができたか | |
改善力 | 自主的に業務改善に取り組んだか | |
コミュニケーション力 | 顧客や社内のメンバーとのコミュニケーションは円滑であったか | |
スケジュール管理能力 | 自ら定めたスケジュールに沿う行動ができたか |
事務職
事務職は営業職と比較するとルーチンワークの比率が高いため、業績目標を設定しにくい職種です。
「現在5営業日要している業務を効率化し、3営業日に短縮する」、「上半期までに事務マニュアルを完成させる」など、業務の効率化や納期を業績評価の評価基準にするとよいでしょう。
能力評価については、ルーチンワークの特性上、正確性やスケジュール管理能力が求められます。
他にも、給与計算や労務管理、経理業務で重要な専門知識やコスト意識なども必要な要素です。
評価基準 | 評価項目 | 内容 |
---|---|---|
業績評価 | 業務目標達成度 | 目標の達成度 |
課題目標達成度 | 業務目標達成のために必要な課題の達成度 | |
能力評価 | 改善力 | 自主的に業務改善に取り組んだか |
正確性 | ミスなく正確に業務を遂行できたか | |
スケジュール管理能力 | 自ら定めたスケジュールに沿う行動ができたか | |
専門知識 | 業務に必要な専門知識を習得しているか | |
コスト意識 | コスト意識を持ち、コスト削減に寄与したか | |
コミュニケーション力 | 円滑なコミュニケーションをとりながら業務遂行できたか |
管理職
管理職は、チームや部署全体の目標の達成度合いが業績評価の重要な評価基準となります。そのため、目標設定の段階でチームや部署単位の業績目標を設定します。
能力評価については、企画力や実行力に加えてリーダーシップやリスクマネジメント力、部下に対する指導・育成能力などが求められます。
また、経営方針や組織目標を部下に伝え理解を促す役割も担っており、幅広い評価項目が必要です。
評価基準 | 評価項目 | 内容 |
---|---|---|
業績評価 | 業務目標達成度 | 目標の達成度 |
課題目標達成度 | 業務目標達成のために必要な課題の達成度 | |
能力評価 | 企画力 | 顧客や組織に対して価値ある提案ができたか |
実行力 | 目標達成に向けた行動量は適切であったか | |
改善力 | 自主的に業務改善に取り組んだか | |
リーダーシップ | リーダーシップを発揮し、組織をまとめられたか | |
リスクマネジメント力 | 予想されるリスクへの対応は適切であったか | |
部下指導・育成 | 部下の成長に寄与したか | |
組織目標の理解と促進 | 組織目標や経営方針を部下へ伝え、理解を促したか | |
マネジメント力 | スケジュール管理やコスト管理を含め、総合的なマネジメント力は備わっているか | |
コミュニケーション力 | 管理職に必要なコミュニケーション力が備わっているか |
代表的な人事評価の手法
人事評価にはさまざまな手法が存在します。
従来の日本では、年功序列で役職や職位、報酬などの処遇が決まることが一般的でしたが、人材の流動化や働き方の多様化をはじめとする環境変化に伴い、評価方法も変化しています。
代表的な人事評価の手法は、以下の4つです。
- MBO評価
- OKR評価
- コンピテンシー評価
- 360度評価
それぞれの特徴を解説します。
MBO評価
MBO評価は「目標管理制度」とも呼ばれ、組織の目指す方向性と従業員個々の目標やビジョンをすり合わせ、効率的な目標達成を支援するマネジメント手法のことです。
MBO評価の特徴は、従来の目標管理とは異なり、従業員自らが目標を定め自主的に行動し、その達成度で評価を受ける点です。
従業員の自主性やモチベーションアップにつながり、結果として組織の生産性向上など、多くの効果が期待できるといわれています。
OKR評価
MBO評価と混同されがちな評価手法としてOKR評価があります。
OKR評価とは、組織の目標と従業員個々の目標をリンクさせ、従業員が一丸となって同じ方向を目指して行動することで目標達成を目指すマネジメント手法のことです。
MBO評価とOKR評価の大きな違いは、人事評価への反映の有無です。
MBO評価は設定した目標を100%達成することを目指し、結果を人事評価へ反映させますが、OKR評価は設定することで組織全体を活性化することを目的としているため、結果が人事評価へ反映されることはありません。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、仕事で高い成果をあげている人の行動特性を評価基準に取り入れた評価手法のことです。
従業員の中でパフォーマンスの高い人材をモデル化したり、企業の経営方針や戦略を基にモデル像を設定し、評価基準を細かく定めていく点が特徴です。
個人の能力だけでなく「高い成果をあげている人がどのような行動をとっているか」に着目して評価基準へ反映させるため、人材育成の面で高い効果を発揮します。
360度評価
360度評価とは、上司だけでなく同僚や部下、他部門の関係者などさまざまな立場の人から評価を得る手法のことです。
あらゆる角度から評価されるため、「多面評価」とも呼ばれます。
上司だけからの評価と比較すると多面的かつ多様な意見が得られるため、自分自身では気づけない長所や短所を知るきっかけとなります。
客観性や公平性に優れた評価手法といえるでしょう。
人事評価を効果的に行うポイント
人事評価を効果的に行うポイントは、以下の4つです。
- 経営理念や行動指針を評価に反映させる
- 最適な評価シートを作成する
- フィードバック面談をする
- 人事評価システムを導入する
それぞれについて詳しく解説します。
経営理念や行動指針を評価に反映させる
経営理念や行動指針は掲げているだけでは意味を成しません。
積極的に人事評価に反映させることで、理念や指針を従業員に浸透させることにつながります。
最適な評価シートを作成する
評価基準や結果を書き込む評価シートは、全員が一律のものを使用するのではなく、業種や職種、役職や職位によって使い分ける必要があります。
営業職は数値目標が明確なため業績評価がメインになりますが、事務職では能力評価や情意評価のウェイトが高いなど、それぞれ求められるものが異なるためです。
新入社員向けに積極性や協調性のウェイトを高めた評価シートを作成するなど、年次によって使い分ける方法もあります。
評価シートは一度作成したら終わりではなく、適宜見直し・整理をはかり、最適な状態を保つことが大切です。
フィードバック面談をする
人事評価は、従業員がよりよいパフォーマンスを発揮するための指針となるものです。
上司から部下に対するフィードバック面談の機会を設けることは、大切なステップの1つです。
面談では、評価の理由と、良かった点・改善が必要な点について伝えるとともに、今後に向けての意見のすり合わせをします。
適切なフィードバックにより、部下のやる気を引き出せる可能性があります。
人事評価システムを導入する
人事評価システムとは、これまで人事担当者がおこなっていた人事評価業務に不随する業務を自動化できるシステムです。
人事評価シートを自動作成・管理できるだけでなく、客観的なデータ分析による評価基準の設定や従業員のスキル管理、評価の実施、評価結果の管理などを一元的に行うことができます。
ニュートンを活用して人事評価制度の効果的な運用を目指そう
ニュートンは、自社にあった柔軟な人事評価制度の設計を実現させるクラウド型人事評価システムです。
後回しになりがちな評価項目の見直し・整理や更新が簡単にできるため、常に最適な評価制度が保たれます。
評価情報は管理者が一元的に管理できるため、これまで人事評価業務に要していた工数を大幅に削減可能です。
煩雑でミスが発生しやすい集計業務もニュートンを活用すれば瞬時に完了します。
人事評価制度の構築や運用に課題を抱えている場合は、ぜひクラウド型人事評価システムニュートンの導入をご検討ください。
この記事を書いたライター
Newton編集部
飲食店の人事に役立つ情報を発信していきます。人材から人材へ、人が育つ人事評価システムNewtonとは、飲食店に特化したタレントマネジメント+人事評価システムです。
管理者の人事管理のパフォーマンスを上げるだけでなく、スタッフのモチベーションアップや、離職率の低下、企業にとっての人材を守るシステムです。詳しくはこちら